以前ゆいクリニック院長日記に掲載した記事を再掲します。
質問:夫が子供と一緒によくYouTubeを見せています。見せないように言っても時間がたつと(数日)また見せています。子供も覚えてしまってYouTubeをTVで見ているので「TVつけて」と言ってくるようになってしまいました。なぜ子供たちにTVや動画PCなどを見せるのがよくないか?を話しても数日しか聞きません。どうしたらいいでしょうか?とりあえずは言い続けています。
答え:小さい子供にテレビやスマートフォンで動画を見せることは、子どもの言葉やコミュニケーション能力の発達を邪魔することになります。
また、子どもが小さければ小さいほどその影響は大きいです。
2歳までの子供には動画を見せないで!
子どもには動画やスマートフォンで簡単に操作して音や光がでることにとても喜びますが、使う事で中毒になり、それをみられないとイライラしたりぐずったりするようにもなります。そして見ることで脳がとても疲れます。大人が自分で楽しみながら子どもとそれを共有したいということもあるかもしれませんが、2歳までの子供には一切テレビやスマートフォンなどのメディアの刺激は与えないようにしましょう。
スカイプでの会話はOK、子供向けテレビ番組は避けて!
2歳までの子供でも遠方にすむ祖父母などとスカイプで会話するのは許容されますが、それ以外は避けることがお勧めです。
子供向けのテレビ番組でも、小さい子供には刺激が強すぎますし、また言葉の発達も邪魔されます。
2歳までは親が一緒でも、子供向け番組でも見ないようにして、2歳過ぎた場合には短時間(一日30分以内など)のみ親が一緒であればテレビの視聴も可能です。
小学生くらいまでは親が制限をすることが大切です。
アメリカ小児科学会の指針
アメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics、AAP)は2歳未満の子供にはテレビを見させるべきではないとする指針を発表しています。
学会は、子供のテレビ視聴に関する多くの研究からテレビ視聴が言語発達の遅れに結び付く可能性を示したものが複数あると指摘しています。
親のテレビ視聴が子供に悪影響を及ぼす可能性についても警告してます。テレビをみていて親はあまり話しをしないことも子供のおしゃべりの時間が短ければ短いほどその子の言語発達が遅れるという科学的証拠もあります。
■乳幼児向けDVDが脳の発達阻む
0~2歳児をターゲットにしたDVDが爆発的に増えていますが、これらもこどもに良くないということを知りましょう。
「良い内容のものも確かにありますが、『セサミ・ストリート(Sesame Street)』でさえ2歳未満にとっては理解できない内容で、学習を促すようなものではありません」
2015年のブログより。
乳幼児へのネット暴露の危険性
乳幼児へのネット暴露の危険性について以前から言われています。
スマホに子守をさせないでというポスターが小児科医会からPDFで配布されています。http://jpa.umin.jp/download/update/sumaho.pdf人間は人間とのふれあいの中で育たないとコミュニケーション能力に支障をきたしてくる。
でも、現代ではむずかる子供にスマホアプリで子供が興味を引く音や絵を見せることで子供をあやすかわりをしてしまうことが出来るようになり、それを利用する親が増えてきている。便利で楽を追及するあまり、育児にもそれを求めてしまい、子供とのコミュニケーションも怠ってしまう。たとえば電車のなかで退屈してぐずる子供に絵本を読み聞かせたり、外をみて外の景色についてお話してあげるのと、スマホで楽しめるアプリを見せたり、ユーチューブで動画を見せるのと、どちらが子供のコミュニケーション能力が育つでしょうか。感覚的にそういうことはわかっていても、つい社会全体がそれを許容してしまうと、スマホを子供が使うことが当たり前になってしまうので、警鐘をならしていくことは大切だなと思います。以前流行った、ベイビーアインシュタインという知育DVDは子供の言語能力を育てるということで宣伝されていましたが、逆に言語能力をそぐことがわかって回収されたという経緯があるそうです。
CDやDVDの外国語は言葉として認識しづらい
また、外国語を認識するために外国語を母国語とする人をベビーシッターとすると、子供は母国語にない音を認識できるようになるが、子供にDVDなどで外国語を聞かせた場合には、外国語の認識ができるようにならないばかりか、母国語の言語能力が劣るということがわかった研究もあるそうです。
私も反省します。
お話をききながら、最近買い物に次男を連れて出かけた時に、子供にユーチューブで、妖怪ウォッチをみせて、スマホに子守をさせてしまったなあと反省していました。えーっ!あんなにテレビはダメって言っている史先生がそんなことしたらダメじゃない、と言われそうですが、準備ができていないとそうなってしまうんですねえ。うちでは日曜日だけは子供向け番組を見ていいということになっていて、最近は朝と午後と2回ほど見せることもあります。(子供たちに30年前のウルトラマンをWOWOWでやっていたのをみせたらはまって、毎週見ています。といっても週一回なのでまだ数話しかみていませんが。)最近は、平日は学校から帰ってきておばあちゃんと毎日子供向け番組を見るようになって、テレビを見る機会が増えてきていますが、一応制限しています。長女と次女はもっとテレビを見せていなくて、次女はテレビをあまりに見ていなかったために小学校時代クラスメイトから、テレビがないとからかわれていやな思いをした、と恨みがましく最近いわれてしまいました。でも、これも子供のためを思った親心からなんですよ。
メディア制限は努力が必要
とっても制限している子供とメディアの付き合い方ですが、それでも暴露は増えているなあというのが実感です。
それをカバーするためにもちびたちへの本の読み聞かせは自分なりに頑張っているところです。
ただ、私の場合には読み聞かせをしていると、必ずと言っていいほど寝てしまうので、子供たちから、お母さんはだめ、お父さんに読んでもらいたいといわれることも多いですが。
日本小児科医会の提言
「子どもとメディア」の問題に対する提言
社団法人 日本小児科医会
「子どもとメディア」対策委員会
2004.2.6
わが国でテレビ放送が開始されてから 50 年が経過しました。メディアの各種機器とシステムは、急速な勢いで発達し普及しています。今や国民の6割がパソコンや携帯電話を使い、わが国も本格的なネット社会に突入しました。今後、デジタル技術の進歩はこのネット社会をますます複雑化し、人類はこの中で生活を営む時代に進みつつあります。これからもメディアは発達し多様化して、そのメディアとの長時間に及ぶ接触はいまだかつて人類が経験したことのないものとなり、心身の発達過程にある子どもへの影響が懸念されています。日本小児科医会の「子どもとメディア」対策委員会では、子どもに関係するすべての人々に、現代の子どもとメディアの問題を提起します。ここで述べるメディアとはテレビ、ビデオ、テレビゲーム、携帯用ゲーム、インターネット、携帯電話などを意味します。特に、乳児や幼児期ではテレビやビデオ、学童期ではそれに加えてテレビゲームや携帯用ゲーム、思春期以降ではインターネットや携帯電話が問題となります。
Ⅰ 提言:影響の一つめは、テレビ、ビデオ視聴を含むメディア接触の低年齢化、長時間化です。乳幼児期の子どもは、身近な人とのかかわりあい、そして遊びなどの実体験を重ねることによって、人間関係を築き、心と身体を成長させます。ところが乳児期からのメディア漬けの生活では、外遊びの機会を奪い、人とのかかわり体験の不足を招きます。実際、運動不足、睡眠不足そしてコミュニケーション能力の低下などを生じさせ、その結果、心身の発達の遅れや歪みが生じた事例が臨床の場から報告されています。このようなメディアの弊害は、ごく一部の影響を受けやすい個々の子どもの問題としてではなく、メディアが子ども全体に及ぼす影響の甚大さの警鐘と私たちはとらえています。特に象徴機能が未熟な 2 歳以下の子どもや、発達に問題のある子どものテレビ画面への早期接触や長時間化は、親子が顔をあわせ一緒に遊ぶ時間を奪い、言葉や心の発達を妨げます。影響の二つめはメディアの内容です。メディアで流される情報は成長期の子どもに直接的な影響をもたらします。幼児期からの暴力映像への長時間接触が、後年の暴力的行動や事件に関係していることは、すでに明らかにされている事実です。メディアによって与えられる情報の質、その影響を問う必要があります。その一方でメディアを活用し、批判的な見方を含めて読み解く力(メディアリテラシー)を育てることが重要です。
私たち小児科医は、メディアによる子どもへの影響の重要性を認識し、メディア接触が日本の子どもたちの成長に及ぼす影響に配慮することの緊急性、必要性を強く社会にアピールします。そして子どもとメディアのより良い関係を作り出すために、子どもとメディアに関する以下の具体的提言を呈示します。
具体的提言2
1. 2 歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。
2. 授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう。
3. すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。1 日 2 時間までを目安と考えます。テレビゲームは1日 30 分までを目安と考えます。
4. 子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう。
5. 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくりましょう。
II. 小児科医への提言:具体的な行動計画
私たちは、「子どもとメディア」の問題解決のため、小児科医が率先してこの問題を理解し、提言に基づき行動を開始することを望みます。そのためには、日本小児科医会が原動力となり、関係諸機関との連携を計り、具体的な行動をとることが重要と考え、以下の具体的な行動計画を提言します。
1. 日本小児科医会の活動
1)メディア教育の重要性を理解し、提言し、行動する指導者を育成する。
(1)日本小児科医会主催の「研修セミナー」及び「子どもの心研修会」で「子どもとメディアの問題」を提起する。
(2)多様な職域が参加できる全国規模の「子どもとメディア」研究会の設立を企画あるいは支援を行う。
2)「子どもとメディア」問題の調査・啓発活動を行う。
(1)記者発表の機会を設定し、小児科医会の「子どもとメディア」に対する提言を公表する。
(2)「子どもとメディア」に関する提言を新聞広告する。
(3)「子ども週間」の全国統一テーマとして「子どもとメディア」を取り上げるように、関係機関に要望する。
(4)日本小児科医会雑誌へ「子どもとメディア」の問題に関する特集の掲載を企画提言する。
(5)日本医師会へ「子どもとメディア」問題を提言し、日本医師会雑誌への「子どもとメディア」問題の掲載を企画提言する。
(6)「子どもとメディア」に関しての市民啓発パンフレット・ビデオを作製し、関係機関に配布する。
(7)「子どもとメディア」に関しての市民向け小冊子を刊行する。
(8)子どもとメディアの問題の調査を行う。
2.外来・病棟での活動
3(1)メディア歴を問診表に組み入れる。
メディア歴を把握するための簡便な問診を作成し呈示する。
一般診療および乳幼児や就学時健診の場で利用する。
問診票からメディア歴を把握する。
メディアへの過剰で不適切な接触がある場合には、保護者と子どもに助言する。
(2)啓発教材を活用する。
啓発用のポスター・パンフレットを掲示、配布する。啓発用の小冊子・書籍の閲覧及び貸し出しを行う。
(3)テレビ・ビデオ等を管理する。
放映する場合には内容を吟味する。啓発ビデオを上映する。貸し出しを行う。
(4)絵本やおもちゃを整備する。保育士やボランディアを導入する。読み聞かせや手遊びなどを提供する空間を整備する。
3.地域での活動
(1)出生前小児保健指導(プレネイタル・ビジット)、母親学級、乳幼児健診、講演会等の場を利用して、子育て中の保護者への啓発を行う。
テレビ・ビデオを見ながらの育児やテレビ・ビデオに任せる育児の弊害を知らせる。乳幼児の視聴の制限や「ノー・テレビ・デイ」等を勧める。
(2)子どもにかかわる人々(保育士、保健師、教諭等)を対象とした「子どもとメディアの問題」研修会を開催する。
(3)保健、福祉、教育、医療等の関係機関に対して啓発活動を提言する。保育園、幼稚園、小中学校、高校、大学、町内会、企業、医師会、自治体等に啓発活動を提案する。
(4)地域でのプロモーション企画(ノー・テレビ・ディほか)を設定する、あるいは支援する。
(5)啓発教材を活用する。啓発用のポスター・パンフレットを掲示、配布する。
啓発用の小冊子・書籍の閲覧及び貸し出しを行う。啓発ビデオを上映する。貸し出しを行う。
4.広域社会活動として
新聞やテレビ等のマスメディアを利用し、「子どもとメディア」問題を啓発する。
5.そのほか
具体的な活動を実施するために、小児科医のための「子どもとメディア」に関するガイドラインの策定
が必要である。そのために、小児科医会は種々の調査を企画し、実施する。
4
(社)日本小児科医会
「子どもとメディア」対策委員会