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質問:授乳についてです。2人目の産後うつ病になってしまい、実家に帰り精神科にも通い治療していますが悪化するばかりで辛い状況です。妊娠前に喫煙者だった事もあり、一昨日2本タバコに手を出してしまいました。母乳はやめてミルクにすると決意したはずが子供達と接していると母乳をあげたい気持ちも出てきました。3年ぶりのタバコはあまり美味しいと感じずやめられそうです。最後の喫煙から何日あければ母乳からタバコの成分が無くなるでしょうか…
母乳育児のお母さんにとっての良いところ
- 産後の出血量の減少、より早い子宮の復古
- 授乳性無月経による妊娠間隔の延長
- 産後の体重減少
- 病気のリスクの低下
- 産後うつ アルツハイマー病
- 2型糖尿病(妊娠糖尿病のある場合)
- 関節リウマチ、心血管系疾患、高血圧
- 高脂血症、閉経前乳がん、卵巣癌、子宮体癌
母乳育児の赤ちゃんにとっての良いところ
健康について、病気のリスク低下:下気道感染症(肺炎や気管支炎)、中耳炎、風邪、咽頭炎、胃腸炎、乳幼児突然死症候群、アレルギー性疾患(喘息、アトピー性皮膚炎、湿疹)、セリアック病、炎症性腸疾患、小児白血病、リンパ腫、早産児(敗血症、壊死性腸炎、発育不良、神経学的後遺症)、神経学的発達(より高いIQ)
母乳育児はお母さんにも赤ちゃんにもたくさんのメリットがあります。また家庭内に喫煙者がいると、直接目の前でタバコを吸わなくても、次のような問題があります。
受動喫煙による子どもへの影響
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)
- 喘息発作,急性気管支炎,肺炎,慢性副鼻腔炎(蓄膿症),アデノイド増殖,中耳炎,扁桃肥大,髄膜炎,ペルテス病,歯肉着色,アトピー性皮膚炎,等々の原因に
- 病気入院が増える
- 身長の伸びが悪くなる
- 知能の発達が劣る
- 虫歯になりやすい
- 成人後の発癌率が高くなる
ですから、タバコを吸って、母乳育児をやめてしまうと、子どもの病気のリスクはとても高くなります。タバコは出来るだけ早くやめるように努力しながら最大限母乳をあげることが子どもの健康のために大切です。
また、現在疲労感が強いという事ですが、栄養をとることはとても大切です。栄養はエネルギーとイコールではありません。疲れているとあまり料理もできず、つい加工品で食事を済ませてしまう(おにぎりやパンなど)ことがあるかと思いますが、炭水化物だけとって、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどが足りない人が多いです。詳しくはyoutube現代人は栄養失調https://www.youtube.com/watch?v=_mRhSjZF_xoをみていただけると良いかと思います。そこでお勧めなのが、生野菜を毎食食事の最初に摂ることです。生野菜についてはyoutube https://www.youtube.com/watch?v=pm2CreH-GLEこちらで紹介しています。またとても大切なのが砂糖が入っている物を避けることです。甘い物をとると一時的に元気になったように感じますが、逆に身体は疲労します。詳細はyoutube砂糖をやめましょうhttps://www.youtube.com/watch?v=BBKlQYJ4j8A
たくさん情報をお伝えして、とても全ては出来無いと思いますが、まずは食事の最初に生野菜からでも始めてみてください。タバコを吸ってしまってもそれは中毒のなせるワザです。もしやめられない場合には禁煙外来で治療を受けることも可能なので、相談して見てください。どうかお大事にしてください。
追加質問:ネットで調べた時には母乳の中からタバコの有害成分が抜けるまでに三日かかるとか1〜3年かかるとかいろんな情報があるんですが、どれが正しい情報なんでしょうか?
どうしてもタバコがやめられない場合には、ニコチンやタバコの有害物質が入った母乳を与えるリスクよりも、受動喫煙(お母さんの服や髪の毛、吐く息に含まれる有害物質)による害の方が問題で、禁煙していれば何も問題なく、授乳できます。
母乳の中のタバコの有害成分がどれだけで完全になくなるのかという情報は正確にはありません。ニコチンに関しては、お薬として発売されているので、データがあり、一日17本タバコを吸っているお母さんとニコチンパッチ30mgを使用した場合が同じくらいの血中ニコチン濃度を認めたという報告があります。このデータはタバコをやめたいお母さんが、ニコチンパッチを使って禁煙しても安全かどうかということを検証したものです。ニコチンの血中濃度は2時間で半減するというデータもあり、もし母乳中の有害物質を避けようとするなら、授乳直後にタバコを吸う、という方法もありですよと書かれている母乳育児の専門家もいます。母乳中の有害成分がゼロになるということを考えるよりも母乳をあげる利点を大事にした方が良いかと思います。正確に乳汁中の成分がたった一本のタバコでどれだけ有害成分を含むかという情報は無いですが、一日20本のタバコを吸っていても子どもの健康のためには母乳育児を続けた方がよいという報告はあります。その他の報告によると、タバコの有害物質の1つであるニコチンは、母乳中に移行します。母乳を通して子どもがとるニコチン量と受動喫煙によって吸収する量を比べると母乳から子どもがとるニコチン量はわずか1%程度だという事です。さらにもしお母さんがタバコの母乳中の有害成分を気にして人工乳を赤ちゃんにあげると、赤ちゃんは人工乳だけで育てられて、様々な病気にかかるリスクが増えてしまいます。母親の喫煙は6ヶ月未満の赤ちゃんで気管支炎などの呼吸器感染症の病気のリスクを1.7倍増やしてしまいますが、6ヶ月以上の母乳育児でそのリスクは1.1倍に下がると報告されています。ただし、6ヶ月以上母乳育児をされて、母親の喫煙がない場合に比べると、6ヶ月未満の母乳育児と母親の喫煙で、呼吸器感染症のリスクは2.2倍になるという報告があります。(母乳育児支援スタンダード第2版より)
お母さんが喫煙していると受動喫煙による子どもの病気(風邪や気管支炎などの病気、中耳炎や喘息などの病気)を増やしてしまいますが、母乳育児をしていると、お母さんが喫煙していても病気のリスクは軽減されるということです。だから、タバコの害を気にして母乳をあげることを避けるよりもどんどん母乳をあげてください。また、母乳育児をしているとタバコの本数が減ったり、禁煙をしやすくなったりしますので、お母さん自身の健康にもとてもプラスになります。
是非出来るだけ長く赤ちゃんにおっぱいをあげられると良いです。母乳育児による子どもへの健康のメリットは量依存性だと言われています。つまりたくさん飲めば飲むほど子どもは病気にかかりにくさ=免疫力アップ、より頭がよくなる、などのメリットが得られるのです。母乳育児の上限はないので、3歳でも4歳でも長くおっぱいをあげて大丈夫です。長く飲んだら甘えん坊になるということはありません。ちょっと蛇足ですが、母乳育児の期間についてもお伝えしました。
妊娠中、授乳中の禁煙補助薬
- タバコを吸ってしまったり、タバコをやめられないのはあなたの意志が弱いからではありません。
- 喫煙はニコチン依存症という病名がついています。
- 禁煙外来は34歳以下であれば、喫煙本数にかかわらず保険診療での治療が受けられます。妊娠中や授乳中にはニコチンパッチは使用しないように薬の説明書には書かれていますが、世界的には妊娠中授乳中の禁煙にニコチンパッチを使用することは一般的です。チャンピックスは妊婦には禁忌となっていませんが、授乳中は禁忌となっています。ですから、授乳中の薬に理解のある先生を見つけないといけないというハードルがありますが、タバコをやめられない場合には、是非理解のある先生を探して禁煙外来でご相談下さい。
私が禁煙外来を始めた理由
私は開業したときに是非禁煙外来を始めたかったのです。それは、妊婦さんの禁煙を自分でサポートしたかったら。以前病院に勤めていたときには、禁煙外来(呼吸器内科の先生が担当されていました)に紹介していました。でも、禁煙がうまくいっているのかどうか、妊婦健診をしながらお話しをしたいと思っていました。開業してからそれが実現しました。禁煙外来は医師の専門にかかわらず、特に呼吸器内科でなくても何科の先生でも開設することが出来るんです。ご夫婦で禁煙をしたいと妊娠中に禁煙外来を受診して下さったかたがいて、その時には、禁煙外来をやっていて本当に良かったと思いました。もし授乳中に吸ってしまって、やめられないときには、禁煙外来で相談して下さい。禁煙外来が近くになかったりしても、ニコチンガムを薬局で購入するという方法もあります。そして、タバコを吸ってしまってもおっぱいはやめないで下さいね。
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この記事を書いた医師
- ゆいクリニック院長
- 島袋 史
- Fumi Shimabukuro
- 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。