今年2月に出版された室月淳先生の出生前診断の現場から 専門医が考える「命の選択」 (集英社新書) をご紹介します。
採血だけでダウン症等の染色体異常がわかる「新型出生前診断(NIPT)」は、2013年の開始以来、急速に普及しているが、そこには多くの問題も指摘されています。
NIPTとはどういう検査なのか、歴史的なことから、また検査についてもわかりやすく説明しています。室月先生は周産期医療のプロで、遺伝カウンセリングをされていて、検査を受ける前にどうして検査を受けたいのか、検査を受ける前に良く考えること、また検査結果でもし染色体異常の疑いがあった場合のことを、検査結果が出る前に考えることをお勧めしています。妊婦さんは何を判断し、結果に備えればよいのかなど考える材料となります。
今後、NIPTが新型ではなく、旧型になることも紹介されていて、どんどんすすんでいく遺伝子検査の技術のなかで、子どもの異常をどうとらえるかということを考える機会になるかと思います。社会が障害のある子どもを受け入れられるようになっていない状況で、妊婦さんが染色体異常の子どもを産まない選択を選ぶという現代社会の問題や、優生思想などの歴史的なことも紹介されています。
染色体異常だけで無く、出生前診断のできない発達障害の子どもが増えているなかで、何十万円もNIPT出生前診断にお金をかけるのであれば、そのお金で妊娠中の栄養改善、産後の家事サポートなどにお金をかけるという選択もあるかなとおもったりしました。
子どもを選ばないことを選ぶ 大野明子著
この本は出版年は2003年とかなり古いのですが、内容はいつ読んでも普遍的な内容だと思います。現在NIPTが普及してきて、染色体異常の検査が以前よりも身体の負担がすくなくて受けられる(金銭的には高いですが)状況で、子どもの異常を心配したり、染色体検査を受けたいと思われる方、赤ちゃんの異常を指摘されたご両親に是非読んでもらいたい本です。赤ちゃんが健康で産まれてきて欲しい、でも妊娠出産は科学の力ではコントロール出来無いところにもあります。子どもの健康を願いながらも命の選択ではなく、子どもをサポートするという大野先生の素晴らしい診療姿勢には本当に見習うところがあります。また、ダウン症の子どもを持つ親御さんの体験談も参考になるお話しです。
以上、出生前診断に関わる本の紹介でした。