助産雑誌6月号において、湘南鎌倉病院副院長井上裕美先生(産婦人科医)と動物行動学者のフランス・ドゥ・ヴァール先生の対談が掲載されていました。対談の中でとても印象的だったのが、類人猿はとても長く子どもを抱いて育てるという事です。以下は記事の引用です。
生き物の行動には全て意味がある
井上先生は、動物の行動を通して、生き物が自然にとる行動には全て意味がある、ということを教わったとのことです。産婦人科医になって、お産で産婦さんがとる自然な行動には何か大切な意味があると考えられています。「人の最初の絆は母と子の絆」、胎内、出産を通して始まる母子関係、それが医療者の都合で母子分離を行って、本来の出産の姿が失われている場面があることを井上先生は危惧しています。
抱いている時間がとても長い
人以外の類人猿ーボノボ、チンパンジー、ゴリラなどはとても安産で、足を開いてたって産むことが多い。赤ちゃんが出てくると、自分で股の下に手を伸ばして、出てきた赤ちゃんをキャッチすることが多いです。子どもは出産後、直ちに乳首を探して吸い付き、その後母子はずっとくっついています。授乳が終わっても、泣いていなくても、母親は赤ちゃんをずっと抱いています。
私たちは赤ちゃんがないていないと寝かせておくことが多いですね。赤ちゃんを寝かせたまま、性能の良いベビーカーを使用する、早期の職場復帰や忙しい母親による育児などで、0歳児の抱っこされる時間が減っているように思うとのことです。
人以外の類人猿は同時に子どもを何匹も育てることはありませんから、母親にとって子育ての負担が人より少ないです。授乳期間が4~5年と長く、出産間隔もあきます。オランウータンは8年間くらいじゅにゅうすることもあるそうです。
ドゥ・ヴァール先生によると、先進国では子どもを独立させようとする時期が早すぎるように思えるとのことです。
母と子から広がる「共感」
ほ乳類には共感する力があります。母親は子どもと共感し合わなければなりません。子どもが空腹である、寒い、嫌な感じがする、危険におびえている、といった行動や表情を母親は察知して行動を起こす必要があります。
女性は育児を通して共感力を高めることが出来るのですね。また、オキシトシンホルモンレベルが上がると共感力があがるとも言われているそうです。
ヒトは父親も育児をする珍しい類人猿で、ホルモンレベルを変えることがわかっているそうです。育児行動がオキシトシンの分泌を邪魔するテストステロンを下げて、オキシトシンをあげることが出来るのだそうです。
この記事を読んで、共感力が弱っている子ども達を増やさないためにもお産や産後の母子早期接触、父子早期接触を大切にしたいと思いました。