妊娠中の栄養と赤ちゃんの体重の増え方

質問:妊娠後半の胎児の体重の増え方は、母親の食事に影響されますか?

答え:妊娠中の母親がとった栄養は胎児の体重に影響します。もし妊婦さんが急に血糖値を上げる食べ物を頻回にとると血糖値が上がり、赤ちゃんがとても大きくなりすぎる可能性があります。これは妊娠糖尿病の方だと、糖をコントロールする力が弱いため、より高血糖になりやすく、巨大児が生まれる可能性が高まります。又、お母さんの高血糖にさらされていた赤ちゃんは、胎内では、血糖値を下げるインスリンというホルモンをたくさん作っていますが、生まれた後にはしばらく母乳の量が少ないため、過剰のインスリンによって低血糖がおこるリスクが高まります。著明な低血糖は生命にも関わる危険な状態で、知的発達にも悪影響が心配されるため、妊娠中の食事は、急に血糖をあげる食べ物を避けて、赤ちゃんのためにも良いものをとることを心がける必要があります。

逆にお母さんが必要な栄養をとらないでいると、赤ちゃんが将来成人病にかかってしまうリスクをもってしまうという事もわかっています。DOHaD仮説やバーカー仮説と言われる考え方です。DOHaDとはDevelopmental Origins of Health and Diseaseの略であり、「将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される」という概念です。小さく産まれた赤ちゃんは、成人期に糖尿病や高血圧、高脂血症など、いわゆるメタボリックシンドロームを発症するリスクが高いという調査結果が1980年代から1990年代にかけて発表されました。

妊娠しているお母さんのエネルギーが少なく栄養状態が悪いと、おなかの中の赤ちゃんは小さくなりやすいことがわかっています。極端な低カロリー食は低出生体重児が生まれる可能性が高まります。このような赤ちゃんは胎内でエネルギーを消費しすぎないような体質を獲得しやすく、将来、生活習慣(食事での高脂肪食や糖質過多、運動不足など)が重なると高血圧や、糖尿病、高脂血症、心血管障害=脳梗塞や心筋梗塞などの病気にかかりやすくなります。

よく妊婦健診で、体重が増えすぎですか?ときかれることがあります。極端な体重増加は、身体に良くない食事内容の可能性があるため注意が必要ですが、体重のみに着目して、妊婦健診があるから食事をぬいて体重を減らして記録しようなどとすると、赤ちゃんに低栄養の負荷をかけてしまい、将来の成人病リスクをあげるかもしれないと知っておいた方が良いです。また赤ちゃんを大きくしたいと糖質をとりすぎると、逆に生まれた後の赤ちゃんの低血糖を招いてしまうかもしれません。ですから妊婦さんやこれから妊娠出産を考えている女性には下記のような事がお勧めです。

妊娠前から注意すること

  • 極端なダイエットをさける。
  • 極端な肥満がある場合は糖尿病の検査を受けておく。
  • 禁煙する。
  • 飲酒は控える。
  • バランス良く食事をとる(麺類だけ、おにぎりだけなどの炭水化物に偏った食事はNG

妊娠中に注意すること

  • 必要十分なエネルギーを摂取する。
  • バランスのよい食事(糖質50%まで、脂質とたんぱく質をしっかりとる)
  • 食事の最初に生野菜をとって、急激な血糖値の上昇を避ける。
  • 良く噛んで食べる。
  • 腸内環境をよくする食事を心がける。
  • 一度にたくさんたべると増大した子宮で苦しくなるかもしれないので、量より質をとる。

生まれた後の子どもの食事を気をつける。

  • 出来るだけ母乳で育てる(赤ちゃんが最初にとる食べ物、母乳は成人病リスクを減らします。)
  • 食品添加物、砂糖、小麦、乳製品を避ける。
  • お菓子や加工品を避ける。

お勧めの本

内山葉子先生著「発達障害にクスリはいらない (子どもの脳と体を守る食事)」

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。