ユースクリニックのご紹介

4/19土曜日午後1時から16時、ユースクリニック、ゆいクリニックにて開催されます。

「ユースクリニック」とは

「ユースクリニック」は、1970年代にスウェーデンで発祥した「若者のためのクリニック」です。
10代~20代前半の若者が「身体・性・心の悩み」を助産師、看護師、心理士、医師などの専門家に何でも相談できる場所で、状況によって必要な医療を無料または安価で受けられます。スウェーデンでは自治体が公費で運営しています。

相談内容は、身体や性の悩み、妊娠の相談、性感染症の検査・治療、避妊法の相談・実施、緊急避妊薬の処方、ジェンダーの相談、人間関係やデートDVの問題、摂食障害など、思春期の若者が抱える様々な悩みに対応してくれます。
プライバシーが尊重されているため、ユースクリニックへ来たこと、相談した内容、受けた医療などは、親を含めて誰にも知られることがありません。
スウェーデンでは、若者にとって当然の権利となっているそうです。
学校との連携もあり、スウェーデンでは性教育の一環として居住地のユースクリニックを訪問することもあります。
社会的認知度が高く、学校でも家庭でも「何か困ったことがあったらユースクリニックで相談しなさい」と言われるような場所で、スウェーデンの若者の90%に利用歴があります。
スウェーデンの人口は1100万人ほどですが、国内に250ヶ所以上のユースクリニックが存在しています。
これを沖縄の人口に換算すると県内に30ヶ所くらいのユースクリニックがあることになります。

若者を取り巻く現状

ネットネイティブと言われる最近の若者たち。
何でもネットで簡単に調べられる便利さの一方で、間違った情報が真実のようにシェアされていることも多々あります。
様々な情報が氾濫するネットの世界が身近にあるにも関わらず、自分の身体と心を守るための適切な教育が圧倒的に不足していると感じます。
特に性教育に関しては、教育指導要領に妊娠の過程については触れない、つまり避妊については教えないという、いわゆる「歯止め規定」があることで必要な知識・情報が伝えられていないという現状があります。

包括的性教育は、性に関することだけでなく、人との関わり方、多様性、身体や心の健康などについて学ぶ「健康教育」であり「人権教育」です。
大人が知っている従来の性教育とは異なる概念です。
また、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)のためにも、包括的性教育や妊娠前から自身の健康についてケアを行うプレコンセプションケアの普及がとても重要です。

何か問題が起きてから行う支援はもちろん大事ですが、適切な知識を得られること、悩みや問題が小さいうちに対処する支援も同時に必要です。
ユースクリニックはそうした予防的な支援の形であると言えます。

立ち上げたきっかけ、地域の特徴

沖縄県の10代の出産率は、減少傾向にあるとはいえ全国平均のおよそ2倍で推移しています。
高校生が妊娠・出産すると、学校を中退したり進学を諦めたりすることも多く、その後の職業選択の幅が狭まることも少なくありません。将来的に若者の貧困問題とも密接に関連しています。

シングルマザーになる場合も多く、経済的・心理的不安を抱えることにもなります。
意図せず10代で妊娠した女の子から、「まさか妊娠すると思わなかった」「パートナーが避妊をしてくれなかった」「誰に相談していいか分からなかった」といった声もよく聞きます。

ユースクリニックは、そんな若者が適切な性の知識を得られ、専門家に何でも気軽に無料で相談できる場として2023年3月に沖縄県初の「ユースクリニック(若者のための身体・性・心の相談窓口)」として活動がはじまりました。

<包括的性教育の本>

<月経グッズ>

「出張ユースクリニック」として学校などへ訪問する活動も行われています。

月経痛や月経不順などの月経に関する悩みや、性に関する悩みがあっても、中高生が産婦人科を受診するのは大人以上にハードルが高いです。
問題を抱えたまま我慢を続けてしまう子も多くいます。
ユースクリニックでは、産婦人科を受診するようなハードルはなく、まずは雑談交じりに色々と話せることが安心感につながっています。

活動実績

参加者の感想

【ユースクリニック】
・性のことなのに恥ずかしさを感じさせない雰囲気(空気)があるのも、ユースクリニックの魅力だと思った
・前にも参加して楽しかったのでまた参加した
・月経グッズがたくさんあることを知れてよかった

【学校訪問:生徒】
・今後の事を前向きに考えられるようになった
・具体的にアドバイスがあったので実践できた
・月経痛の悩みや治療について詳しく聞けて不安が解消された
・今度は彼氏と一緒に聞いてみたい
・友達や親に相談しにくい事を、専門の先生に相談できて良かった

【学校訪問:教員】
・何を相談していいかわからないと話していた生徒が、話すことで気持ちが整理され、すっきりした様子であった
・専門医が学校に介入して頂けるということ、生徒だけでなく教員にとっても学びが大きかった
・学校だけでは包括的性教育の実践が難しく専門医の協力はとても必要

今後の展望

  • ユースクリニックの定期開催場所を現在の2ヶ所からスウェーデン並みの30ヶ所へ
    離島を含めた各市町村に1ヶ所設置することを目標にしています
    近隣の学校と連携することで顔の見える関係づくりが可能になり、
    より相談しやすい環境を実現します
  • 医療機関と連携してスムースに医療へ繋ぐ環境整備
    医療的支援(診察・検査・治療)が必要な場合に、近隣の医療機関へ紹介します
  • ユースクリニックの運営を公費で
    県や市町村に働きかけ、若者にとって当たり前の場所にしていきたいと考えています
  • 将来的には医療の無償支援へ
    緊急避妊薬の処方、妊娠検査・性病検査などの無償支援にも繋げていきたいと考えています

代表者メッセージ

美ら海ユースクリニック代表で産婦人科医の深津真弓と申します。縁あって沖縄へ移住して4年目になります。

沖縄は綺麗な海に囲まれ、独特の文化が息づくとても素敵な場所だと思います。
一方で、他県とは異なる若年妊娠や貧困などの社会的課題もあります。
沖縄の歴史・文化を大切にしつつ、ユースクリニックの活動を通して若者が自身の持つ可能性を最大限に発揮し、生き生きと人生を歩むお手伝いをしたいと思っています。
自分を大事に!そして大切な人も大事に!

参考文献

・海外のユースクリニックを参考とした、日本における相談窓口普及に向けた提言書
https://www.pharma.bayer.jp/si…
・性教育について -学習指導要領上の規定と望ましい性教育の在り方の考察-
https://www.jmari.med.or.jp/wp…

2025年4月19日開催ユースクリニック、会場:ゆいクリニック

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。