妊娠中の貧血がおなかの赤ちゃんにあたえる影響

妊娠中の栄養が赤ちゃんを育てることに大切だという事は、当たり前のこととしてみな知っていると思います。でも、本当にわかっているかというと、まだまだ栄養の大切さということでは、足りないのではないかと思います。

鉄不足と鉄欠乏性貧血を改善するために大切な栄養

鉄不足と鉄欠乏性貧血を改善するために大切な栄養

貧血対策にお勧めの食材

貧血対策にお勧めの食材

妊娠中に鉄が必要になる理由

妊娠中に赤ちゃんが育つにつれて、お産までにお母さんの血液は一時的に約1.5倍(最大45%増)にまで増えます。でも、赤血球は同じようには増えず、約20%しか増加しないため、妊婦さんはみんな貧血になってしまいます。妊娠していない女性のHb(ヘモグロビン)値は12g/dl以上が正常ですが、妊娠している女性は11g/dl以上が正常値なのはそのためです。増えていく血液量にみあうだけの赤血球を作らないといけないため、原料の鉄がたくさん必要になります。通常の女性は一日あたり2mg程度の鉄をとる必要がありますが、妊娠している女性は最低でも4mg(口からとる場合全部吸収されるわけでは無いので鉄40mg)の鉄をとる必要があります。また妊娠後期には5mg以上必要になります。

妊娠中の鉄不足、貧血が胎児にあたえる影響

影響 内容
低出生体重 胎児の成長に必要な酸素や栄養が不足し、出生時の体重が少なくなるリスクが上がります。(日本のデータでは、むしろ出生体重は多いというデータもあります。)
早産 鉄欠乏性貧血が進行すると、早産(37週未満での出産)のリスクが高まります。
胎児の鉄不足 生まれた赤ちゃんが鉄不足の状態になることがあり、免疫力や発達に影響します。
脳や神経の発達障害 鉄は神経系の発達に不可欠なので、不足すると言語能力や認知機能の発達に影響を及ぼすリスクが指摘されています。
将来の健康への影響 一部研究では、胎児期の鉄不足が、成長後の行動問題や学習障害のリスク増加と関連する可能性も示されています。

妊婦健診で、貧血が分かってからでは遅い。

鉄欠乏性貧血と鉄不足について~検査結果の見方:かくれ貧血も体調不良の原因となります

貧血の目安となるHb(ヘモグロビン)が、妊娠中の正常範囲内の値であっても、フェリチン(身体の中に蓄えられている鉄を反映する)がすくなかったり、MCV(赤血球の大きさの目安)が小さかったりすれば、鉄やその他赤血球をつくる大切な栄養が足りないという可能性があります。妊婦健診で、貧血だと指摘される前、できれば妊娠前から栄養補給を行っていくことがお勧めです。

妊娠中のサプリメント補給

食事から栄養がすべてとれれば良いのですが、どうしても、妊娠中の必要量がとても多いので、食事だけではまかないきれないことが多いです。その場合に、鉄剤や鉄のサプリメントをとる事になるのですが、保険で処方される鉄剤では、吐き気などの副作用を伴うことが多く、また過剰な鉄は抗酸化力を落としてしまう可能性があります。

鉄剤の問題点

鉄剤内服は身体に良くないと聞きました。貧血でいるのと鉄剤を摂ることはどちらがリスクが高いでしょうか??

鉄剤が副作用で飲めない方や、ヘム鉄を希望する方にはサプリメントをお勧めしています。ゆいクリニックでは、ヘム鉄、キレート鉄などを紹介していますが。それらも飲めないという方で、フローラディクスがあっているという方もいます。フローラディクスは自然な野菜や果物の素材に乳酸鉄をくわえたサプリメントです。原材料の植物は、すべて農薬不使用・有機栽培。フローラディクス内服で吐き気を訴える人はとても少なく、ハチミツを加えてすこし甘くしてあるので、小さい子どもでもとりやすい鉄サプリメントです。ただし、ハチミツは一歳未満の子どもは飲めないので、一歳未満のお子さんにはあげないように注意して下さい。

質問:貧血のお母さんが赤ちゃんに母乳をあげると赤ちゃんも貧血気味になるのでしょうか?

妊娠中に足りなくなりがちな大切な鉄以外の栄養

タンパク質:ヘモグロビン(酸素運搬する赤血球の成分)も鉄を運搬するトランスフェリンもタンパク質です。酵素やホルモンの受け皿もタンパク質が主成分です。タンパク質はとても大切な栄養です。タンパク質を摂るためには煮干し出汁味噌汁をお勧めしています。またサプリメントであれば、プロテインパウダーよりも消化吸収しやすいアミノ酸サプリメントがお勧めです。

煮干しだし味噌汁のおすすめ

タンパク質のとり方②お勧めの食材

ビタミンB:エネルギーを産生したり、身体の成分を合成したり分解したり、身体の中で起きる化学反応(代謝)に深く関わります。特に、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6はタンパク質が合成されるとき、細胞が分裂するときに必要量が増えます。ビタミンBはたくさんの種類が必要ですが、それぞれが一緒に働く必要があるので、ビタミンB群として一緒にとることがお勧めです。

ビタミンC:ミネラル吸収を高めてくれます。鉄吸収に大切なビタミンです。

カルシウム:マグネシウムと一緒に大切なミネラルです。

ビタミンD:カルシウムやリンの吸収を助け、骨や歯を強くします。免疫力をサポート(風邪や感染症にかかりにくくするための免疫機能を助けます。)、筋肉の健康を保つ、体内の慢性的な炎症をコントロールする役割もあります。

妊娠したい人と妊婦さんにとっても大切なビタミンD

亜鉛:亜鉛は酵素の働きに不可欠なミネラルです。

亜鉛について

産後の鉄や亜鉛の不足は、うつのリスクになる

産後の鉄や亜鉛の不足は、産後うつのリスクをあげるという報告があります。お腹の赤ちゃんのためにも大切な鉄ですが、産後出血で鉄や亜鉛不足が続くと、産後うつのリスクをあげてしまいます。赤ちゃんのためにもお母さん自身のためにも妊娠中にしっかりと栄養をとりましょう。

妊娠中にしっかりと栄養補給したことで、子どもの発達が良かった。

妊娠中にしっかりと栄養補給したことで、子どもがとても手がかからず、コミュニケーションがとりやすく、育児がやりやすいと言っているお母さんがいました。妊娠中のお母さんの腸内環境をよい状態にして、しっかりと栄養補給して、子どものミネラルバランスを整えてあげることで、子どもの発達や情緒がとてもよい状態になると考えられます。

サプリメントや薬剤をうまく使って、妊娠中の栄養をサポート

自然な食べ物には、ある1つの栄養だけで無く、様々な栄養が含まれています。サプリメントをとっているから、食事はいい加減でよいということはもちろんありません。食事をしっかりと栄養をあるものをとって、そこにあたかも含まれているように足りない栄養を補ってあげるという事が大切です。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。