れいなさんのお産物語(子宮内発育不全と初産骨盤位分娩=逆子のお産)

れいなさんのお産物語

初めての妊娠と出産で様々なトラブルに見舞われながらも、無事に出産されたれいなさんのお産物語を紹介します。

れいなさんの妊娠経過

れいなさんは22歳で、妊娠24週からゆいクリニックで妊婦健診を受け始めました。それまでは他の病院で妊婦健診を受けていました。ゆいクリニックで妊婦健診を受け始めたときに、貧血があることが分かりました。そこで、足りない栄養である。鉄と亜鉛のサプリメントの内服始めました。

鉄不足と鉄欠乏性貧血を改善するために大切な栄養

鉄欠乏性貧血と鉄不足について~検査結果の見方:かくれ貧血も体調不良の原因となります

鉄剤内服は身体に良くないと聞きました。貧血でいるのと鉄剤を摂ることはどちらがリスクが高いでしょうか??

亜鉛について

タンパク質のとり方②お勧めの食材

タンパク質のとり方③どうやって食べると良いか。

タンパク質のとり方④どれだけ食べた方がよいのか

妊娠したい人のための準備講座

妊娠したい人のための準備講座-前編後編

妊娠中の便秘

便秘もあったので、整腸剤や緩下剤も服用しながらサプリメントにクロレラを加えて、栄養をしっかり摂るようにしていきました。妊娠中にはホルモンの影響や大きくなる子宮が腸を圧迫して便秘になりがちです。便秘があると腸内環境が悪くなって、栄養吸収がうまくいかなくなりがちです。クロレラは葉酸だけでなく、ビタミンB12やアミノ酸などのたくさんの栄養が摂れるうえに、デトックス効果も期待できるので、妊婦さんにもとてもお勧めのサプリメントです。

妊娠中の腸内環境を良くして、健やかに赤ちゃんを育てるために。

葉酸サプリメントについて

子宮内胎児発育遅延

れいなさんは、身長154cm、妊娠前の体重は46kgととても小柄な方でした。妊娠中の体重の増え方もゆっくりで、妊娠33週でも体重は51kgでした。通常は、妊娠中の体重増加の目安は、妊娠してから出産までの期間で7~12kg程度とされているのですが、れいなさんはもともとやせているので、ややゆっくりの体重増加でした。また、赤ちゃんの推定体重ですが、妊娠33週だと標準の体重は約2000gなのですが、れいなさんの赤ちゃんは、推定体重が約1500gと標準よりかなり小さめでした。

子宮内胎児発育遅延の原因

1. 母体要因
高血圧: 妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧、子癇前症など)は、胎盤への血流を制限し、胎児の成長を阻害することがあります。
栄養不良: 母親が十分な栄養を摂取していない場合、胎児への栄養供給が不十分になる可能性があります。
喫煙、飲酒、薬物使用: これらは胎児への酸素供給を低下させ、発育を阻害するリスクを高めます。
慢性疾患: 糖尿病、腎疾患、心疾患、自己免疫疾患などが母体にあると、胎児の成長に影響を及ぼすことがあります。
2. 胎盤要因
胎盤機能不全: 胎盤が適切に機能しない場合、胎児への栄養と酸素の供給が妨げられ、発育が遅れることがあります。
前置胎盤や剥離: 胎盤が正常な位置にない、あるいは剥離することで、血流や栄養供給が低下します。
3. 胎児要因
遺伝子や染色体異常: ダウン症候群やターナー症候群などの染色体異常は胎児の発育に影響を及ぼします。
多胎妊娠: 双子や三つ子などの多胎妊娠では、胎児同士が限られた資源を共有するため、発育遅延が起こることがあります。
先天性異常: 心臓、腎臓、脳などの重要な臓器に異常があると、発育が遅れる可能性があります。
4. その他の要因
感染症: 妊娠中に母体がウイルスや細菌感染(例えば、トキソプラズマ、風疹、サイトメガロウイルスなど)を起こすと、胎児の発育に影響が出ることがあります。
環境要因: 高度汚染された環境での生活や有害な化学物質への曝露も、胎児の発育に影響を及ぼすことがあります。

れいなさんの赤ちゃんが小さいのは、お母さんの栄養不足が最も関係していると考えられました。胎盤の状態をよくして、赤ちゃんを大きくするためにも、運動をして、しっかり栄養をとれる食事をして、身体を温めることが大切だと考えました。その時点で入院を勧めましたが、できるだけ通院で頑張りたいと希望されて、毎日のように温熱療法などでクリニックに通院して、しっかりと栄養のあるものを食べるように頑張ってもらいました。サプリメントの量も増やしましたが、やはり食事がもっとも大切なのでした。ただ、妊娠中の栄養の必要量はとても多いので、食事だけではまかないきれない栄養をサプリメントでも補いました。妊娠35週の時点で、赤ちゃんの推定体重は約2000gとなり、やや小柄ながらも成長がみられていました。

逆子

ゆいクリニックで妊婦健診を受け始めてから、赤ちゃんの向きはずっと頭が上で、逆子の状態でした。妊娠10カ月までにはほとんどの赤ちゃんは頭が下になるように自然に回ってくれるので、それまでは特別なことはしません。ですが、安産と赤ちゃんの向きが良い状態になるように、妊娠初期から、西式健康法の合掌がっせき運動をしっかり行うように妊婦さんにおすすめしています。れいなさんにも合掌がっせき運動をしっかりするようにお伝えしました。

妊婦さんにお勧めの運動:西式健康法の合掌がっせき運動、毛管運動、膝立金魚運動

どうして赤ちゃんは逆さまなのですか?小学生からの質問

外回転術

赤ちゃんのむきが逆子の場合には、お母さんのお腹の上から赤ちゃんをさわって、逆子の状態から赤ちゃんの頭を下にする方法として外回転術があります。

逆子の治療、骨盤位外回転術、井穴刺絡、骨盤位経腟分娩、逆子(さかご)のお産

逆子をなおす外回転術について、動画で紹介します。

妊娠34週5日に外回転トライ

れいなさんは、妊娠34週5日で、外回転術を受けることをトライしました。けれども、結果として赤ちゃんは逆子からまわらず、その時点で、お産の方針をどうするか相談していきました。外回転術を行う際には、その刺激で破水や陣痛が起こってしまうこともあるため、36週以降で行うことが多いです。れいなさんの場合は、少し早めにトライしました。

当院の逆子治療

外回転術で頭が下にならなかった場合には、帝王切開でお産するか、逆子のままお産をトライするか検討することになります。でも、逆子のお産は赤ちゃんにとってリスクがあるのです。

逆子のお産(骨盤位経腟分娩)の問題点

逆子の状態は、頭がお母さんの胸のほうにあり、お尻がお母さんの足にほうにある状態で、医学用語では、骨盤位という状態です。妊娠35週を過ぎると、自然に骨盤位がなおる可能性は20%未満になります。骨盤位での分娩(お尻や足が先に生まれてくるお産)は、頭から生まれてくるお産よりもトラブルが多く、赤ちゃんに障害が残ったり、死亡したりする危険性がより高まると考えられます。

●お尻や足が先に生まれてくると、いちばん大きな頭の部分が後になり、産道という狭い部分が十分に押し広げられていないために頭がでづらくなります。

●頭のような大きな部分が先に来ていないために、臍の緒がからだより先にでてしまうことがあります。(臍帯脱出)

このような状態になると、赤ちゃんはお母さんから酸素がもらえない状態となり、酸素不足により、低酸素性脳障害や胎児死亡、新生児死亡を起こすことがあります。

そのため、逆子の場合には、骨盤位経腟分娩は帝王切開分娩に比し,赤ちゃんにとって危険である可能性が指摘されています。

赤ちゃんのお尻が出てきた後、臍の緒は産道と赤ちゃんの身体により圧迫されるため、赤ちゃんは胎盤からの酸素がその間十分にもらえなくなります。

逆子のお産の場合にはこの状態になるまでは、なるべく息まずにゆっくりと赤ちゃんが下りてくるのを待ちます。そしてお尻がもう出てくるのを抑えきれなくなったところで、一気に赤ちゃんが出てこられるようにお手伝いします。通常は、分娩台の上で、骨盤位の赤ちゃんが出てこれるようにお手伝いする医療手技を使ってお産を手助けしたりしますが、ゆいクリニックでは分娩台の上では無く、マットレスの上で、起きあがって重力の力も借りながら一気に赤ちゃんの身体全体と頭が出てくるのを手助けするように息んでお産をします。起きあがって赤ちゃんを産むときにはパートナーの助けも借りてお産となります。また、息むときには、子宮口は十分に柔らかく開いている必要があります。そのため、赤ちゃんの身体が出てくるのを焦らずにじっくりと待つ必要があります。お産の開始の時にはお尻が先に進んで来ていたとしても、お産の経過中に赤ちゃんの体勢がかわって、赤ちゃんの膝や足が先に出てくるような場合や、赤ちゃんの状態によっては、お産の途中で、帝王切開分娩に切り替える必要がでてくる場合もあります。

臍帯脱出が起こった場合には赤ちゃんの身体の位置の高さによって帝王切開または経腟分娩を行うかその時点で判断します。ただし、その時点では赤ちゃんが、低酸素状態が続いて、低酸素性脳障害を起こしてしまうリスクがとても高くなります。

れいなさんの赤ちゃんの胎位

れいなさんの赤ちゃんは、複殿位という逆子のむきでお腹の中にいました。

複殿位は、膝を曲げた状態で、おなかの中で赤ちゃんがあぐらをかいたような姿勢です。お尻と足の両方が一緒に出てくるので、頭の大きさとあまり差が無く赤ちゃんが出てくるので、頭が引っかかる可能性がより少ない胎位です。それに比べて足位は、細い足から出るので、臍の緒が出てきてしまう臍帯脱出のリスクや一番最後に大きな頭が出てきて、頭がひっかかるリスクがより高くなるお産になります。

複殿位

単殿位

 

逆子のお産(初産骨盤位)を決断

逆子のお産は、赤ちゃんに重度の後遺症を残したり、亡くなってしまったりするリスクがあるため、あまり行われなくなってきています。れいなさんの場合には、赤ちゃんが小さめだったこと、赤ちゃんの向きが複殿位という状態だったため、下からのお産が可能と判断しました。そして、夫婦で相談して、下からのお産を決断されました。

妊婦さんのたち方歩き方モデル

妊婦さんの正しい立ち方歩き方について:よい姿勢で運動しましょう!

お産が始まった!

そして、ついに妊娠38週2日、日付が変わった頃に陣痛が始まりました。陣痛が始まる少し前に破水があり、入院してすぐに自然な陣痛が始まりました。朝9時の時点では、子宮口は一指開大、約2cm程度の開大でした。そこからゆっくりとお産は進んで、夜10時前には、子宮口全開大して、赤ちゃんのお尻が会陰の間から見える状態まで赤ちゃんは降りてきました。けれどもそこから陣痛は弱くなり、陣痛と陣痛の間がかなりあくようになってきました。逆子のお産の場合、赤ちゃんが下りてきて最後に一気にお産になるほうが赤ちゃんへの負担が少ないため、ここはどんどん陣痛が来てほしいところです。夜12時過ぎから陣痛を強めるために陣痛促進剤の投与を点滴で開始しました。1時24分ついに赤ちゃんのおしりがはまって戻らなくなったため、そこから膝立ちになって、次の陣痛で一気に赤ちゃんが出てきました。1時31分赤ちゃんはついに生まれてきました!でも、赤ちゃんは生まれてきたときには、自分で呼吸する力がなく、ぐったりしていました。出てくるときにへその緒が圧迫されて、酸素不足になっていた影響で生まれてきてすぐに自分で泣いて呼吸する力がなかったのです。そこですぐに赤ちゃんに人工呼吸の処置を行いました。生まれて2分ではしっかりと泣き始めて生後5分の時には、ピンク色の肌で元気いっぱいになり、お母さんに抱かれました。

新生児蘇生法

生まれてきたときに自分で泣くことができなくても、人工呼吸のサポートを受けることで、ほとんどの赤ちゃんの命を助けることができます。ゆいクリニックではお産に関わる看護スタッフはすべて、新生児蘇生法の講習を受けて、赤ちゃんの人工呼吸などの蘇生処置を行えるように訓練を受けています。

新生児蘇生法講習会のご紹介(NCPR)

無事に退院

生まれたときの体重は2296gと標準より小柄な女の子でしたが、元気いっぱいにおっぱいを飲んで、赤ちゃんは、無事にお母さんと一緒に、生後6日目に退院できました。

低出生体重児

生まれたときの赤ちゃんの体重が2500g未満の場合は、低出生体重児となります。

低出生体重児の原因
  • 早産児(Preterm Infants): 妊娠37週未満で生まれた新生児で、出生時に発育が不十分である場合があります。多くの場合、早産が原因で低出生体重になります。
  • 胎児発育不全(Intrauterine Growth Restriction, IUGR): 妊娠期間が37週を超えても、胎児が十分に成長しない状態です。これは、胎盤の問題や母体の栄養状態が悪い場合、もしくは他の健康問題に関連して発生します。
低出生体重児のリスク要因
  • 母親の健康状態: 母親の栄養不足や貧血、慢性疾患(例:高血圧、糖尿病)などは胎児の成長に影響を与える可能性があります。
  • 喫煙・飲酒・薬物使用: 妊娠中の有害物質の摂取は胎児の発育を妨げる大きなリスク要因です。
  • 感染症: 妊娠中の感染症も胎児の発育不全や早産を引き起こす可能性があります。
  • 多胎妊娠: 双子や三つ子以上の多胎妊娠では、1人あたりの栄養供給が限られるため、低出生体重児が生まれる確率が高まります。

低出生体重児のリスク:低出生体重児は、健康面でのリスクが高く、特に以下のような問題が発生しやすくなります。

  • 呼吸障害: 肺の発達が未熟な場合、呼吸困難を起こすことがあります(新生児呼吸窮迫症候群)特に早産児の場合にみられます。
  • 低体温: 体脂肪が少ないため、体温を維持するのが難しく、低体温症になるリスクがあります。
  • 感染症: 免疫力が弱いため、感染症にかかりやすいです。
  • 長期的な発達障害: 学習障害や運動能力の発達遅延、さらには慢性的な健康問題を抱えるリスクがあります。

早期接触

少し小さく産まれてきましたが、お母さんのおなかの中には38週までいたので、呼吸状態は生まれた時に人工呼吸をうけて呼吸補助を受けた後は落ち着いて、しっかり酸素を取り込めるようになりました。小さく産まれた赤ちゃんは、体温調節がうまく出来無い場合がありますが、おなかの中にいた期間が長いほど、低体温になる可能性は少なくなります。れいなさんの赤ちゃんは、お母さんにしっかり抱かれて、体温もちゃんと保つ事ができました。

早期母子接触

お父さんも早期接触

お父さんの早期接触

お父さんの早期接触

れいなさんのその後

赤ちゃんのために育児休暇をとってから、仕事に復帰した後に、れいなさんは次の妊娠をしました。二人目の妊娠は、なんと胎盤が1つの一卵性の双子の妊娠でした。胎盤が1つのタイプの双子の場合には、胎盤から二人の赤ちゃんにいく血液の量のバランスが悪くて、赤ちゃんがうまく育たなくなるリスクがあります。(双胎間輸血症候群)また、二人の赤ちゃんを育てることで、早産してしまったり、赤ちゃんがとても小さく産まれてしまうというリスクもあります。そのようなリスクのある双子の妊娠でしたが、れいなさんは、無事に10ヶ月近くまで赤ちゃんをおなかの中で育てることができて、少し早めでしたが、36週1日に、2340gと2361gの二人の女の子を出産されました。双子のお産の場合、リスクがあるため、2回目のお産は、帝王切開での出産となりました。こうして、リスクのある2回のお産をのりこえて3人の女の子のお母さんとなったれいなさんですが、お産は人生を変えるきっかけをくれることもあり、リスクの高いお産を二回も乗り越えたれいなさんは大変なお産を乗り越えて、女性としても母としても大きく成長されました。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。