夜間頻尿について
夜間頻尿は、夜間に排尿のために目が覚める状態を指します。通常は、睡眠中に膀胱の活動が低下し、尿の生成も減少するため、夜間にトイレに起きることはあまりありません。なので、夜間に排尿のために1回以上おきるという状態は夜間頻尿という事になります。ただ、夜中に一回でも起きて生活に支障があるという場合には対応を考える必要がありますが、通常は、2回以上夜間排尿で起きる場合が問題とされます。40歳以上の男女で、夜間1回以上トイレに起きる人の数は、約4500万人と推計されて、日本の人口の36%にもなります。特に年齢があがると夜間に排尿のために起きる人の割合が増えます。問題は、夜中に何度もトイレに行くことで、睡眠が中断されてしまうことです。
夜間頻尿の原因
夜間頻尿の原因は多岐にわたります。
- 過活動膀胱:過活動膀胱は、膀胱が過敏に反応し、少量の尿でも強い尿意を感じる状態です。これは昼夜を問わず起こることがありますが、夜間頻尿の一因にもなります。
- 高齢化:加齢に伴い、膀胱の容量が減少し、抗利尿ホルモンの分泌が減ることで、夜間の尿生成が増加します。
- 多尿:過剰な量の尿を生成する状態です。夜間多尿は、夜間に尿の生成が増えることで起こります。
- 飲み物や薬の影響:就寝前にカフェインやアルコールを摂取することや、水分のとりすぎ、利尿作用のある薬を服用することで、夜間に尿の生成が増えることがあります。
- 心不全や腎不全:心不全や腎不全などの疾患は、体内の水分バランスに影響を与え、夜間の尿生成を増やすことがあります。
- 睡眠障害:睡眠時無呼吸症候群や不眠症などの睡眠障害は、夜間頻尿と関連していることがあります。浅い睡眠では、わずかな尿意でも目覚めてしまい、トイレに行き、その後再び眠りにつけなかったり、眠っても浅い睡眠になり、再度尿意を感じて夜間何度もトイレに行くということが起きてしまったりします。夜間頻尿と不眠はお互いに影響をして、症状が悪化したりします。
- 膀胱蓄尿障害:成人の一般的な一日の尿量は1000~2000mlであり、平均的な膀胱容量は300~500ml、一回排尿量は200~400ml程度です。高齢者では膀胱容量が少なくなってしまったり、膀胱容量は正常でも、尿が残ってしまって、頻尿になる場合があります。
排尿記録の勧め。
排尿記録をつけることで、夜間の多尿があるかどうかが判断できます。寝ている間の尿量を、24時間の尿量で割ってみる。夜間の尿の割合が、若年者では0.2を超えたら夜間多尿、65歳以上では0.33を超えたら夜間多尿となります。電子排尿日誌測定は、排尿時間と尿量を記録するデジタルツールを使用する方法で簡便に24時間尿量が分かります。
尿量測定の手順
- 準備するもの:
- 計量カップやメモリのついた容器(一回量が300mlを超える場合もあるので、大きめのものがお勧めです。)
- 記録用の紙やノート
- ペン
- 測定の開始:
- 朝起きて最初の排尿から測定を始めます。
- 初回の排尿は測定に含めず、次の排尿から量を記録していきます。
- 時間を決めて行う場合には7時スタートの場合、7時に排尿してその尿は量に含めない。その後翌朝7時の排尿までで24時間とする。
- 測定方法:
- 排尿時に、準備した計量カップや容器に尿を直接排出します。
- 尿の量をミリリットル単位で測定します。
- 測定後、トイレに流します。
- 記録:
- 尿量を測定した時間とその量を記録します。
- 1日分のデータをすべて記録し、24時間後に合計します。
- 計測の継続:
- 通常は3日間以上継続して測定し、平均値を取るとより正確なデータが得られます。
記録例:
以下のような形式で記録するとよいでしょう。7時スタートの場合、
時間 | 尿量 (ミリリットル) |
---|---|
08:00 AM | 250 |
10:30 AM | 150 |
01:00 PM | 200 |
03:30 PM | 180 |
06:00 PM | 220 |
08:30 PM | 200 |
10:30 PM | 150 |
06:30AM | 350 |
07:00AM | 50 |
合計 | 1750 |
電子排尿日誌測定は、排尿時間と尿量を記録するデジタルツールを使用する方法で簡便に24時間尿量が分かります。アプリを利用すると便利です。
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夜間頻尿の影響
夜間頻尿は生活の質に大きな影響を与えます。主な影響には以下が含まれます:
- 睡眠の質の低下:頻繁に目が覚めることで深い睡眠が妨げられ、疲労感や昼間の眠気が増加します。
- 日中のパフォーマンス低下:十分な睡眠が取れないことで、集中力や注意力が低下し、仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。
- 心理的ストレス:繰り返される夜間の目覚めや睡眠不足は、イライラや不安感を引き起こすことがあります。
対処法
夜間頻尿を軽減するための対処法には以下が含まれます:
- 生活習慣の見直し:就寝前に飲み物を控える、カフェインやアルコールの摂取を制限する。
- 薬物療法:専門医の診断に基づいて、過活動膀胱や多尿を改善する薬の処方を受けることがあります。
- 行動療法:排尿日誌をつけて尿のパターンを把握し、適切なトイレ習慣を身につけること。尿量をチェックしてみる。実際に量がすくないなら、睡眠が浅いことが問題になると思います。
- 医療機関での相談:原因となる疾患(心不全、腎不全、睡眠時無呼吸症候群など)の治療が必要な場合があります。
- 睡眠の改善:睡眠薬を使用するのも1つの方法です。
夜間頻尿は多くの人に共通する問題ですが、適切な対策を講じることで症状を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。
「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」に基づく、夜間頻尿改善のための10ヵ条
- 飲水の制限:特に寝る前と夜目覚めたときなどの夜間の水分摂取を控えましょう。
- アルコールやカフェインの制限:寝る前の3~4時間のアルコールや、カフェイン(コーヒー、紅茶、日本茶、栄養ドリンクなど)を控えましょう。
- 適切な食事:規則正しい食事習慣、(ガイドラインでは朝食摂取を勧めていますが、島袋は朝食抜きを勧めています。)
- 運動療法:夕方までに軽い運動を行う(寝る前3時間は激しい運動はしない。)
- 禁煙:喫煙を控えることで改善が期待されます。少なくとも寝る1時間まえや夜中目覚めたときのタバコは控えましょう。
- 光を浴びる:朝光を浴びると交感神経が刺激されて目覚めてその後夜に睡眠ホルモンのメラトニンがふえて自然に眠くなります。
- 入浴:寝る1~2時間前に入浴(40~41℃で約20分間)、または足浴(40℃で約20分間)
- 昼寝:どうしても昼間に眠気がある場合には、午後3時までに30分以内の昼寝を行う。
- リラックス:寝る1時間前からはスマートフォンやPC画面を見ないようにして(ブルーライトを避ける)、少し暗めの照明で音楽や好きなアロマなどの香りでリラックスしましょう。
- 生活リズムを整える:朝一定の時刻に起きるようにしましょう。
カフェインやめて
ホメオパシーによる治療
朝食抜き
参考文献:Vita No.166 P.48-55(2023年10月発行、発行株式会社ビー・エム・エル)、
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この記事を書いた医師
- ゆいクリニック院長
- 島袋 史
- Fumi Shimabukuro
- 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。