頻尿対策(過活動膀胱)

成人の一日の尿量は1500ml前後で、2000mlを超えないのが正常です。また、排尿回数は一日に6~8回程度が一般的です。

尿量の異常

  • 多尿: 1日あたりの尿量が2,500ミリリットル以上の場合を指し、糖尿病や利尿剤の使用が原因となることがあります。
  • 乏尿: 1日あたりの尿量が400ミリリットル以下の場合を指し、脱水症状や腎機能の低下が原因となることがあります。
  • 無尿: 1日あたりの尿量が100ミリリットル以下の場合を指し、急性腎不全などの重篤な状態が原因となることがあります。

一日尿量は20~25ml/kg(体重)の範囲になるように飲水量を調整することが推奨されています。正常な範囲内にあるかどうかを確認するためには、自分の尿量を数日間記録し、必要に応じて医師に相談することも大切です。

尿量測定の手順

  1. 準備するもの:
    • 計量カップやメモリのついた容器(一回量が300mlを超える場合もあるので、大きめのものがお勧めです。)
    • 記録用の紙やノート
    • ペン
  2. 測定の開始:
    • 朝起きて最初の排尿から測定を始めます。
    • 初回の排尿は測定に含めず、次の排尿から量を記録していきます。
    • 時間を決めて行う場合には7時スタートの場合、7時に排尿してその尿は量に含めない。その後翌朝7時の排尿までで24時間とする。
  3. 測定方法:
    • 排尿時に、準備した計量カップや容器に尿を直接排出します。
    • 尿の量をミリリットル単位で測定します。
    • 測定後、トイレに流します。
  4. 記録:
    • 尿量を測定した時間とその量を記録します。
    • 1日分のデータをすべて記録し、24時間後に合計します。
  5. 計測の継続:
    • 通常は3日間以上継続して測定し、平均値を取るとより正確なデータが得られます。
記録例:

以下のような形式で記録するとよいでしょう。7時スタートの場合、

時間 尿量 (ミリリットル)
08:00 AM 250
10:30 AM 150
01:00 PM 200
03:30 PM 180
06:00 PM 220
08:30 PM 200
10:30 PM 150
06:30AM 350
07:00AM 50
合計 1750

電子排尿日誌測定は、排尿時間と尿量を記録するデジタルツールを使用する方法で簡便に24時間尿量が分かります。アプリを利用すると便利です。

  1. 排尿日誌 | 排尿量・水分摂取量をかんたん記録:使いやすいインターフェースで、排尿時間と尿量、水分摂取量を簡単に記録できます。
  2. 排尿日記 – 簡単トイレ記録Apple Watchとも連携可能で、記録を簡単に行えます。無料で利用でき、広告非表示オプションもあります​
  3. 排尿日記: Urinote多言語対応で、使いやすいデザインです。プレミアムプランでさらに多機能に利用可能です​ 

※これらのアプリは、iOSデバイス(iPhone、iPad)に対応しています。

アンドロイドでは、

  1. 排尿日誌 | 排尿量・水分摂取量をかんたん記録:排尿量と排尿時間を簡単に記録でき、分析画面で週間、月間のデータをグラフで確認できます。シンプルな操作でストレスなく使うことができ、尿切迫感や尿漏れの設定オプションもあります​
  2. かんたん排尿日誌~頻尿改善~Urination Diary:排尿管理に特化したシンプルなアプリで、排尿量と水分摂取量を登録して、1日の排尿回数や水分摂取量を確認できます。

頻尿の原因には以下のような原因が挙げられます。

一時的な原因

  1. 水分摂取の増加:
    • 大量の水や利尿作用のある飲料(カフェイン飲料やアルコール)を摂取することで、尿の生成が増加します。
    • 尿量測定してみることも大切です。水分摂取が大切だからと水を摂りすぎていて、一日の尿量が正常を超えている場合もあります。
  2. 寒冷環境:
    • 寒い環境にいると体が冷え、頻繁に尿を排出しようとすることがあります。
  3. 緊張やストレス:
    • 緊張やストレスによって自律神経が刺激され、頻尿になることがあります。

病的な原因

  1. 尿路感染症(UTI):膀胱や尿道の感染によって炎症が起こり、頻繁に排尿したくなることがあります。
  2. 膀胱炎:膀胱の内壁が炎症を起こし、頻繁な排尿や不快感を引き起こします。
  3. 過活動膀胱(OAB):急な強い尿意と頻尿を伴う状態で、膀胱の筋肉が過敏になっていることが原因です。
  4. 前立腺肥大症:男性の場合、前立腺が肥大することで尿道が圧迫され、頻尿や排尿困難を引き起こします。
  5. 糖尿病:血糖値が高いと体が余分な糖を排出しようとし、その結果として頻尿になることがあります。
  6. 神経系の異常:多発性硬化症やパーキンソン病など、神経系の障害が膀胱のコントロールに影響を与えることがあります。

その他の原因

  1. 妊娠:子宮が膀胱を圧迫するため、頻繁に排尿したくなることがあります。
  2. 加齢:加齢に伴い、膀胱の筋肉が弱くなることや、膀胱の容量が減少することで頻尿が生じます。
  3. 便秘:大腸に便が溜まることで膀胱が圧迫され、頻尿になることがあります。

行動的・生活習慣的原因

飲み物や食べ物の影響:カフェインやアルコール、スパイシーな食べ物など、膀胱を刺激するものを摂取すると頻尿が促進されることがあります。

これらの原因が考えられるため、頻尿の症状が続く場合や日常生活に支障をきたす場合は、医療機関で相談してみましょう。

過活動膀胱(Overactive Bladder、OAB)とは

膀胱の機能に異常が生じ、頻繁に急な尿意を感じる状態を指します。過活動膀胱は以下のような症状を特徴とします。

過活動膀胱の主な症状

  1. 頻尿:日中および夜間を問わず、通常よりも頻繁に尿を排出する必要を感じる状態です。
  2. 急な強い尿意:突然、強烈な尿意を感じ、我慢が難しい状態です。
  3. 尿失禁:尿意を感じてからトイレに間に合わず、尿が漏れてしまうことがあります。特に急迫性尿失禁(急に強い尿意を感じ、漏れてしまうこと)が特徴です。

下記の質問票を使うことで重症度が分かります。

過活動膀胱症状質問票(OABSS)

項目 質問内容 回答選択肢と点数
1 尿意切迫感:急に強い尿意を感じて我慢が難しいことがどのくらいありましたか? 0回 (0点)
週に一回より少ない (1点)
週一回以上(2点)
一日一回ぐらい (3点)
一日2~4回 (4点)
一日5回以上 (5点)
2 昼間の頻尿:朝起きてから寝るまでに、何回くらい排尿しましたか? 7回以下 (0点)
8~14回 (1点)
15回以上(2点)
3 夜間の頻尿:就寝後、夜間に何回くらい起きて排尿しましたか? 0回 (0点)
1回 (1点)
2回 (2点)
3回以上 (3点)
4 切迫性尿失禁:急に強い尿意を感じて、漏らしてしまったことがどのくらいありましたか? 0回 (0点)
週に一回より少ない (1点)
週一回以上(2点)
一日一回ぐらい (3点)
一日2~4回 (4点)
一日5回以上 (5点)

合計点数の評価

  • 0-5点:軽症
  • 6-11点:中等症
  • 12点以上:重症

原因

過活動膀胱の原因はさまざまです。以下の要因が考えられます。

  • 神経系の異常: 神経が正常に機能しない場合、膀胱が誤って収縮することがあります。
  • 膀胱の筋肉の異常: 膀胱の筋肉が過敏になり、過剰に収縮することがあります。
  • 加齢: 年齢とともに膀胱の機能が低下することがあります。
  • 尿路感染症: 一時的な膀胱の過敏状態を引き起こすことがあります。
  • 多飲多尿:水を飲み過ぎているかのうせいがあります。
  • その他の健康状態: 糖尿病や高血圧、多発性硬化症などの持病が影響することがあります。

治療方法

  1. 生活習慣の改善:カフェインやアルコールの摂取制限、水分を適切にとる。
  2. 行動療法:膀胱訓練(なるべく尿を我慢する練習)や骨盤底筋トレーニング(ケーゲル運動)など。
  3. 薬物療法:抗コリン薬やβ-3アドレナリン受容体作動薬など、膀胱の筋肉の過剰な収縮を抑える薬が用いられます。
  4. 手術療法:薬物療法や行動療法で効果が見られない場合、手術が検討されることがあります。
  5. 専門医の診断と治療:重症な場合には、泌尿器科の専門医に相談が必要な場合もあります。

過活動膀胱は生活の質に大きな影響を与える可能性があるため、早期の診断と適切な治療が推奨されます。

骨盤底筋トレーニング

  • 骨盤底筋を鍛えることで、膀胱のコントロールが改善されることがあります。具体的には、ケーゲル運動が有名です。

薬物療法

  • 医師の指導のもと、適切な薬物を使用することがあります。頻尿の原因に応じた薬物治療が効果的です。

ホメオパシー

ホメオパシーで尿失禁や頻尿が改善する場合があります。

ホメオパシー

HIFUによる治療

切迫性尿失禁に腹圧性尿失禁が併発している場合があり、その場合には、腟ハイフと肛門ハイフを併用することで尿失禁が改善が期待できます。

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参考文献:Vita No.166 P.40-47(2023年10月発行、発行株式会社ビー・エム・エル)、

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この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。