質問:次の子を妊娠したらただちに母乳をやめた方がよいでしょうか?
答え:妊娠してもすぐに母乳育児をやめる必要はありません。授乳中に妊娠がわかってから、そのまま授乳をつづけても、流産や早産をしやすくなったり、特に妊娠に悪い影響は起こりません。
妊娠中に授乳を継続しても流早産の原因にはならないので、体調と相談しながら授乳を続けても大丈夫です。
妊娠中の授乳は初期の流産を増やさない
静岡石井第一産科婦人科クリニック:石井廣重先生は、妊娠中に母乳育児を続けたお母さん達の妊娠の状況を調査しました。妊娠中に母乳育児を続けた110人中8人(7.3%)が自然流産となったのですが、対照の母乳育児をしていない774人中65人(8.4%)が流産になったという結果で、授乳をしていてもしていなくても流産率に差は無かったという結果でした。Ishi.H. Does breastfeeding induce spontaneous abortion? J.Obstet.Gnynaecol.Res. 35(5).2009.864-8.
授乳をしてもしなくても自然流産の可能性は10~20%程度あると言われています。もし授乳を続けて流産になったとしても、それは授乳の影響ではありません。
授乳すると分泌されるオキシトシンホルモン
オキシトシンホルモンとプロラクチンというホルモンは授乳に関係するホルモンです。オキシトシンホルモンは別名愛情ホルモンとも言われていて、様々な精神的なよい影響をもたらすことが分かっていて、授乳だけで無く、人と人との触れあいなどでも分泌されます。人を信頼する力をはぐくむホルモンだとも言われています。また、分娩時に陣痛を起こすホルモンとしても知られています。オキシトシンホルモンが分娩時の子宮収縮に関係することから、妊娠中の授乳は子宮を収縮させて、流早産を増やすと考えられていました。でも、オキシトシンホルモンは妊娠後期の妊娠10ヶ月近くになってからで無いと子宮収縮を起こしません。そのため、妊娠初期に授乳を行ってオキシトシンホルモンが分泌されても、流産は増えないのです。
妊娠中の授乳で注意が必要な場合
以前に早産になったことがある場合、前置胎盤の場合などの特別な状況がある場合には、妊娠中の授乳での少しの子宮収縮も影響が起こる場合があるので、担当の医師と授乳継続について相談するようにしてください。
授乳中に妊娠が分かった場合の授乳をやめるタイミング
妊娠がわかって直ちに授乳をやめる必要はありませんが、悪阻で授乳がつらくなったり、妊娠することで母乳の出がすくなくなったり、母乳の味が変わることで子どもが自然におっぱいから離れることもあります。妊娠した場合には、自然におっぱいをやめる可能性が60~70%あるとも言われています。また、授乳時に乳頭に痛みを感じてお母さんが授乳を辛いと感じるようになるかもしれません。そのようなときにはすこしずつ授乳回数を減らしていくことで、自然に上の子どもはおっぱいから離れるかもしれません。
きょうだい同時授乳
妊娠中の授乳が特に辛くなく、授乳を続けた場合、お産後には上の子と生まれてきた赤ちゃんの二人に授乳する場合もあります。いったん妊娠中におっぱいから離れた子どもも、出産後に再度おっぱいを飲むようになることもあります。二人同時に授乳したとしても、生まれてきた赤ちゃんの授乳回数を減らさないように注意することで、赤ちゃんの体重増加には大きな影響はありません。ただし、基本的には赤ちゃんを優先して飲ませてあげるようにしましょう。上の子には、赤ちゃんが飲み終わってから授乳するなど決めた方がうまくいきやすいです。上の子の嫉妬から赤ちゃんに授乳することをいやがる場合があります。授乳を終えた後は新生児は他の家族にみてもらい、上の子をしっかりと構ってあげるようにしましょう。時には二人同時に授乳するという事もトライしても良いかもしれません。
妊娠と母乳育児
妊娠したら母乳をやめないといけないという事は無いし、母乳をやめないと次の妊娠が出来無いという事もありません。子どもの必要性を大切にして、妊娠中の母乳育児やきょうだい同時授乳という選択があることも知ってもらえたらと思います。
参考文献:
母乳育児支援スタンダード第2版、「母乳育児と妊娠、きょうだい同時期授乳」金森あかね
ドクターKIRIKOのおっぱい育て: 母乳で育てたいお母さんのために! 涌谷桐子著