おしゃぶりって赤ちゃんに必要?

答え:必要な物ではありません。母乳育児を邪魔してしまうリスクを理解して、使うかどうか考えることがお勧めです。

母乳育児がうまくいくための 10 のステップ

「母乳育児成功のための 10 カ条」2018 年改訂版
WHO/UNICEF:The Ten Steps to Successful Breastfeeding, 2018
施設として必須の要件
1a. 「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」と世界保健総会の関連決議を
完全に順守する。
1b. 乳児栄養の方針を文書にしスタッフと親にもれなく伝える。
1c. 継続したモニタリングとデータ管理システムを確立する。
2. スタッフが母乳育児を支援するための十分な知識、能力、スキルを持つようにする。
臨床における必須の実践
3. 母乳育児の重要性とその方法について、妊娠中の女性およびその家族と話し合う。
4. 出産直後からのさえぎられることのない肌と肌との触れ合い(早期母子接触)がで
きるように、出産後できるだけ早く母乳育児を開始できるように母親を支援する。
5. 母親が母乳育児を開始し、継続できるように、また、よくある困難に対処できるよ
うに支援する。
6. 医学的に適応のある場合を除いて、母乳で育てられている新生児に母乳以外の飲食
物を与えない。
7. 母親と赤ちゃんがそのまま一緒にいられるよう、24 時間母子同室を実践する。
8. 赤ちゃんの欲しがるサインを認識しそれに応えるよう、母親を支援する。
9. 哺乳びん、人工乳首、おしゃぶりの使用とリスクについて、母親と十分話し合う。

(9. 母乳で育てられている赤ちゃんに, 人工乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう:改訂前の母乳育児成功のための10ヵ条の第9条)
10. 親と赤ちゃんが継続的な支援とケアをタイムリーに受けられるよう、退院時に調整
する。翻訳:NPO 法人日本ラクテーション・コンサルタント協会 2018 年 9 月

おしゃぶりを使っている赤ちゃんを、ちまたでよく見かけます。

私も長女を育児中に、何のために必要かよく分からないままに、赤ちゃんっておしゃぶりを使うのが普通なのかしら?と思って、買い与えたことがありました。当時長女が生後3ヶ月くらいだったと思います。でも、おっぱいをのんでいた長女にとってはおしゃぶりはくわえても全く楽しくなかったようですぐに吐き出して、くわえようとはしませんでした。おっぱいを飲んでいる娘にとっては、おしゃぶりはまったく必要無かったようです。

おしゃぶりは便利ですね、でもリスクがあります。

一人目は使わなかったけど、二人目でつかっていますというお母さんがいました。車に乗るときなどおしゃぶりをくわえていると泣かないので、とても便利でしたとのことでした。赤ちゃんが泣き止んでくれる、寝付きが良くなる、などのメリットはありますが、使うことの問題点も理解して使った方が良いかと思います。

おしゃぶりの問題点

1.乳頭混乱

おしゃぶりを使うと母乳育児を邪魔してしまうかもしれないのです。「乳頭混乱」という言葉があります。おっぱいを飲んでいる赤ちゃんにほ乳瓶やおしゃぶりを使うことで、おっぱいを吸うことをいやがるという事です。逆に保育園に預けるためにほ乳瓶になれさせましょうという話しもあります。おっぱいを飲んでいる赤ちゃんがほ乳瓶をいやがることが多いからです。でもそれは当たり前だとは思います。問題はおっぱいだけ飲んでいる赤ちゃんがおっぱいをのまなくなってしまうことです。そうなると大変です。もし預ける予定がある場合でも、早くから保育園のためにほ乳瓶になれさせるよりも、預ける時期のぎりぎりまで最大限にしっかりとおっぱいをあげて、保育園にいくぎりぎりでお母さん以外の大人がほ乳瓶で授乳するのがお勧めです。またその場合のほ乳瓶の中味は、搾乳母乳がお勧めです。というのは、たった一回でも人工乳をのむと一時的に腸内環境がビフィズス菌優位から大腸菌優位になってしまうからです。

2.おっぱいが傷つく可能性

おしゃぶりを吸っていると口をすぼめて吸う癖を付けてしまい、その癖でおっぱいを吸うと、おっぱいを浅く吸うようになってしまい、おっぱいが傷つくようになってしまう可能性があります。

3.おっぱいを吸う機会がへって母乳の量が減ってしまう可能性

赤ちゃんがおしゃぶりをくわえることで、おっぱいを吸う機会が減ってしまうかもしれません。その場合、おっぱいへの刺激が減って、母乳の量が減ってしまう可能性があります。赤ちゃんの体重の増えが悪くなってしまうという事につながるリスクもあります。

4.歯並びの問題

歯が生えてからもおしゃぶりを使うと歯並びに影響がでてしまう可能性があります。1才半頃からやめるように、遅くとも2才までにはおしゃぶりはやめた方が良いと勧められています。

5.かみ合わせの問題

歯のかみ合わせが悪くなって、食べ物を噛む力に悪影響がでてしまう可能性があります。不正咬合で上下の歯が適切に噛み合っていない状態が起こってしまう可能性があります。おしゃぶりで、あごの骨に悪影響がおこってしまうこともあるのです。

6.カンジダ感染の可能性

おしゃぶりが不潔な場合に、口の中にカンジダ症(鵞口瘡)にかかってしまう可能性があります。あまり症状が無いことが多いですが、お母さんの乳頭に感染して、お母さんがカンジダ乳頭炎にかかってしまうリスクもあります。

7.中耳炎

1才をすぎてもおしゃぶりを使っていると、中耳炎にかかりやすくなると言われています。おしゃぶりを使うことで、のどや鼻の中の圧に影響することがあるようです。

8.赤ちゃんの発達をじゃまする可能性

赤ちゃんは何でも口にいれて色々な物を確かめようとしたりします。口にいれて形や味などを確認して学びます。でもおしゃぶりをくわえているとそれが出来ません。もしおしゃぶりを使うとしても時間や機会を限定した方がよさそうです。

9.コミュニケーションを邪魔する

赤ちゃんが泣くのは大切なコミュニケーションの手段です。赤ちゃんが泣いたときに、はいはいと口におしゃぶりをくわえさせるのは、赤ちゃんに泣いてはいけないというメッセージをあたえることになるし、また、赤ちゃんが訴える力を邪魔することになってしまいます。おしゃぶりを使うにしても、いつでも泣いたらくわえさせるというのは避けましょう。

※おしゃぶり使用での注意:ストラップを付けていつでも使えるようにするのはやめた方が良いし、また、ひもで首に巻き付いて窒息のリスクもあります。おしゃぶりをぬいぐるみや服やベッドなどにストラップで固定するのはやめましょう。

車の中だけ、外出中だけ、お昼寝のときだけ、など、どうしても赤ちゃんが落ち着かない時間帯や状況などだけに使うルールを作ります。毎回おしゃぶりを使ってねるいなければ、癖も付きにくいです。

鼻呼吸になる?

おしゃぶりを使うと鼻呼吸をする習慣がつくという意見もありますが、口を開ける癖をつけて口呼吸になるという意見もあります。鼻呼吸の習慣のためにおしゃぶりを使うという選択はやめておいた方がよいでしょう。

質問:おしゃぶりはダメだけど、指しゃぶりはOKとありました。うちの子2人(4歳、2歳)とも指しゃぶりが止まりません。どうしたらやめてくれるのでしょうか。

答え:無理矢理やめさせる必要はありません。ただ、とてもひどいと、指しゃぶりで歯並びや顎の形に悪影響がでることがあります。お子さんがどういうときに指しゃぶりをしているのか観察して見てください。指しゃぶり以外のことに興味が持てるように、対策も検討して良いかもしれません。眠いときに指しゃぶりするなら手を握ってあげたらどうか、など。小児歯科学会のHPでは、「スキンシップを図るために、例えば寝つくまでの間、子どもの手を握ったり、絵本を読んであげたりして、子どもを安心させるようにします。4歳以降も頻繁な指しゃぶりが続く場合は小児科医、小児歯科医および臨床心理士の連携による積極的対応が必要です。」と書かれています。4歳のお子さんに小児歯科の専門医に相談することも検討してみてください。ゆいクリニックで妊婦さんに毎月「おなかの中から始めるお口育て」の講義を行っている島袋郁子先生(おさむファミリー歯科)は小児歯科の専門の先生です。妊婦クラスの時に質問も出来ます。親があまり思い悩まずにいると、いつのまにかやらなくなったりするかなとも思います。

おしゃぶりと指しゃぶりの違い

おしゃぶりは、子どもが自分の意志では無く、親がくわえさせてしまいがちです。赤ちゃんが泣くことはコミュニケーションの1つなのですが、親が色んな理由で泣き止ませたくておしゃぶりを子どもの口に突っ込んでしまうことも有るかと思います。それで子どもは泣き止むこともありますが、子どもが訴えたいことを押さえ込んでしまうと言う可能性もあります。指しゃぶりは子どもが自分の意志で指を口に持っていきます。また口を使うことで自分の身体の感覚を確かめているという事もあり、赤ちゃんの発達段階の過程で必要な事でもあります。

※赤ちゃんが、顔をひっかくからと赤ちゃんの手に手袋をする場合がありますが、そうすると子どもが手をつかって指しゃぶりや色々な物を感じ取る力を邪魔してしまうことになりかねません。赤ちゃんの爪は、顔をひっかかないように切ってあげてできるだけ手袋は使わないようにしましょう。

この記事を書いた医師

島袋 史 (ゆいクリニック院長)
  • ゆいクリニック院長
  • 島袋 史
  • Fumi Shimabukuro
  • 【資格】日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医、ホメオパシー認定医、新生児蘇生法インストラクター。1970年東京都生まれ、1989年大学入学のため沖縄へ。1995年、琉球大学医学部卒業。琉球大学産婦人科入局。沖縄県内にて研修後、2011年にゆいクリニックを開院。4児の母。小児科医の夫と共に、多くの女性の出産・育児を支援するほか、更年期や月経トラブルなど女性のための治療を行い、ホメオパシーや栄養療法やプラセンタ療法などの自然療法も積極的に取り入れている。特に、小麦や砂糖、乳製品、食品添加物を一切使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説いている。