産婦人科を訪れる全妊娠の10~20%頻度で流産します。流産は決してめずらしくはありません。その流産の原因のほとんどは、妊娠した卵そのものであることが多いのです。(たまたま出会った卵と精子の組み合わせが悪く、染色体異常のことが多いのです。)もともと育たない妊娠が、自然淘汰によって流れるようになっているのです。
流産か、正常に妊娠経過していくかの分かれ目は、出血があるかどうかではなく、妊娠した袋(胎嚢)に胎児心拍(心臓の動き)がみえてくるかどうかで、決まってきます。心拍さえ見えてくれば、多少出血があろうと流産することは非常にまれであります。出血がなくても、妊娠7週までに心拍が見えてこなければ、流産の可能性を強く疑います。
赤ちゃんが入る袋だけが大きくなって、赤ちゃんが見えてこない場合や、いったん赤ちゃんの心拍が見られた後に育たなくなることは、特に妊娠9週くらいまでに起こることが多いです。
自然淘汰とわかっていても赤ちゃんが来てくれてから育ってくれることを期待していたのに赤ちゃんが育たないとわかればとても悲しく残念なことではあります。
また、中には、赤ちゃんの心拍がみえて赤ちゃんが育ってきてから成長が止まっているのがわかることもあります。
短い間でもおなかの中で一緒に過ごしてくれた赤ちゃんとさよならするのはとても辛く悲しいことでもあります。
でも、赤ちゃんはお母さんを苦しめるために来たのではないと思います。
赤ちゃんがおなかに来て自分でタイミングを選んでお空に帰っていっているのではないかというお話がたくさん載っている本があります。
「ママ、さよなら。ありがとう」 池川明著 二見書房
赤ちゃんはお母さんにたくさんありがとうというメッセージをくれているというお話も載っています。
赤ちゃんを産まない選択をしたお母さんや赤ちゃんがおなかでなくなってしまったお母さんにこの本を紹介しています。いずれの場合でも、この本を読んで気持ちが軽くなったと言われる方が多いです。
流産したことでとてもつらい気持ちになると思います。
けれど、赤ちゃんはお母さんの笑顔を見るためにやってくるのであり、お母さんを傷つけるためではありません。
お母さんとして深い悲しみを経験することで、お母さんは一回り大きく成長される機会を与えられたのだと考えられるとこの本に書かれています。
流産や死産は深い悲しみですが、ショックが大きいだけにより深い気づきのチャンスを与えてくれます。
自分の命をかけてメッセージを伝えてくれた赤ちゃんからの気づきを受け止めていけたらと思います。
赤ちゃんはお母さんの役に立ちたいとおなかに来てくれているのだそうです。
以前、ゆいクリニックで妊娠8週の大きさの赤ちゃんを流産された方がいました。
本当にお産と一緒でおなかが痛くなって赤ちゃんがでてきて、そのあとに出血が増えて、塊(胎盤のもとになるもの)が出てきたら出血が収まりましたとおっしゃっていました。
とっても安産だったと思います。
流産にも難産があって医療のサポートが必要になることもありますが、安産もたくさんあります。
この方は、とっても安産だったようで、流産の後の体の戻りは順調でした。
出てきた赤ちゃんは本当にとってもかわいかったので、写真にとらせてもらいました。
ご主人と一緒に眺めてお別れしたそうです。
赤ちゃんがお空に帰るのはとても残念だったけど、なかなか妊娠できなかったのに、妊娠できたということがとてもうれしかったとお母さんはおっしゃっていました。今回はとても短い間しかお母さんと一緒にいられませんでしたが、それでも赤ちゃんはおなかに来てくれてお母さんと過ごしてくれたのです。またこうやって妊娠できるのだということも教えてくれました。
赤ちゃんがこのタイミングでお空に帰っていった意味をまた見出していってもらえたらと思います。
お空に帰っていった赤ちゃんはとてもかわいくて笑っていました。